建設業許可申請でよくある5つの勘違い|申請前に知っておきたいポイントを行政書士が解説
建設業許可申請でよくある5つの勘違い
「建設業許可って、結局うちは必要なの?」「資格を持っていれば取れるんでしょ?」——初めて建設業許可の取得を考える方から、私が行政書士として最もよく受ける質問です。
建設業許可は、制度の全体像が見えないまま“なんとなくの思い込み”で進めてしまうと、いざ申請の段階で「要件が足りなかった」「そもそも対象が違った」と手戻りが起きやすい手続きです。準備に数か月かけたあとで気づくと、受注のタイミングを逃すことにもなりかねません。
この記事では、建設業許可申請の現場でよく出会う5つの勘違いを、要件の根拠とあわせて分かりやすく整理します。初めて申請する個人事業主の方も、これから許可取得を検討する建設会社の経営者の方も、申請前のセルフチェックとしてお使いください。
※本記事は令和7年度「東京都建設業許可の手引き」に基づいて解説しています。営業所の所在地によって許可行政庁が異なり、取扱いの細部も変わることがあるため、最終的には管轄行政庁の最新の手引きでご確認ください。
建設業許可とは
建設業許可とは、建設業法に基づき、建設工事の完成を請け負う営業を行うために必要な許可です。工事の種類は29業種に分かれており、業種ごとに許可を受けます。
まず押さえておきたいのが、すべての工事に許可が必要なわけではないという点です。次の「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可がなくても工事ができます。
- 建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事
- 建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満(税込)、または木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事
また、許可は営業所の所在地によって区分されます。営業所が1つの都道府県のみにある場合は「知事許可」、複数の都道府県にまたがる場合は「大臣許可」です。「工事をする場所」で決まるのではなく「営業所の場所」で決まる、という点が重要です。
それでは、申請前に知っておきたい5つの勘違いを見ていきましょう。
勘違い①「小さな工事しかしないから、建設業許可は必要ない」
最も多い勘違いが、この「金額」にまつわるものです。
確かに、前述のとおり建築一式以外なら1件500万円未満の工事は許可不要です。しかし、実務の相談で「500万円未満だから大丈夫」と思っていた方が、実は対象だった——というケースは少なくありません。理由は、請負代金の数え方にあります。
- 分割契約は合算される:一つの工事を2つ以上の契約に分けても、正当な理由がなければ各契約の合計額で判断されます。「契約を分ければ500万円未満になる」は通用しません。
- 材料費も加算される:注文者が材料を提供する場合、その材料の市場価格(必要に応じて運送費も)を請負代金に加えて判断します。
- 「未満」である点:500万円“ちょうど”は許可が必要です。500万円以上の工事を請け負うなら許可が要ります。
「単発の大きな工事を1件受けることになった」というタイミングで慌てて相談に来られる方も多いですが、許可取得には準備期間がかかります。継続的に500万円以上の工事を狙うなら、受注の前に許可を整えておくのが安全です。
勘違い②「個人事業主では建設業許可は取れない」
「法人じゃないと許可は取れないんですよね?」——これもよく聞かれますが、個人事業主でも建設業許可は取得できます。法人化は必須ではありません。
建設業許可の要件は、後述する「経営経験」や「技術者」「財産的基礎」などを満たせるかどうかで判断されます。これらは個人事業主でも証明が可能です。たとえば財産的基礎の自己資本は、個人の場合の計算方法が手引きにきちんと定められています。
ただし、個人で申請する場合も、営業所の実体があること、常勤性(その営業所にきちんと常勤していること)、社会保険など事業の状況に応じた要件は法人と同様に確認されます。「個人だから無理」とあきらめる必要はありませんが、「個人だから簡単」というわけでもない、というのが実際のところです。
勘違い③「資格(専任技術者)さえあれば許可は取れる」
技術系の資格をお持ちの方に多いのが、「資格があるんだから許可は取れる」という思い込みです。
確かに、許可には営業所技術者等(旧:専任技術者)が必要です。これは営業所ごとに、許可を受けようとする業種について、国家資格を持っている、指定学科を卒業後に一定年数(高卒5年・大卒3年など)の実務経験がある、または10年以上の実務経験がある、といった「技術力」を備えた人を専任で置くという要件です。
しかし、許可の柱はこれだけではありません。もう一つ、常勤役員等(経営業務の管理責任者=経管)という「経営力」の要件があります。これは、建設業に関して5年以上、経営業務を管理した経験を持つ人を常勤で置く、というものです。
つまり建設業許可は、「経営の経験(経管)」と「技術の裏づけ(専技)」という2本柱がそろって初めて成立します。「資格はあるが経営経験を証明できる人がいない」「経営は長いが技術者がいない」というケースは、どちらか一方だけでは申請できません。
なお、1人で経管と専技の両方の要件を満たしていれば、同一営業所内で兼務することも可能です。一人親方や小規模な事業者の場合は、この“1人2役”が現実的な進め方になることも多いです。
経営経験(経管)の数え方や前職での証明については、建設業許可の「経管」とは?前職の役職・経験を確認する3つのポイントで詳しく解説しています。また、資格がなくても実務経験で技術者要件を満たす方法は、専任技術者の実務経験を書類で証明する手順【東京都】をご覧ください。
勘違い④「現金で500万円を用意できないと許可は取れない」
「銀行口座に500万円ないとダメなんですよね?」——財産的基礎についての勘違いです。
一般建設業の財産的基礎は、次のいずれかを満たせばよいことになっています。
- 自己資本の額が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること(取引金融機関の預金残高証明書や融資証明書で判断)
- 直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること
ポイントは、「常に手元に現金で500万円を寝かせておく」必要はない、という点です。たとえば、申請のタイミングで一時的に500万円以上の残高証明が取れれば、資金調達能力として認められます。「お金が足りないから無理」と決める前に、どの方法なら現実的に証明できるかを整理してみることをおすすめします。
残高証明書を取るタイミングや、決算書のどこを見るかなど、財産要件の詳細は建設業許可の財産要件が不安なときに確認すること【東京都版】で解説しています。
勘違い⑤「一度取得すれば、ずっと有効」
最後は、取得後の勘違いです。建設業許可は一度取れば一生有効、ではありません。
- 有効期間は5年間です。
- 引き続き建設業を営むには、有効期間が満了する日の30日前までに更新の手続きが必要です。
- 更新を怠ると、期間の満了とともに許可は失効します。失効すると、軽微な工事を除き、許可が必要な工事を請け負えなくなります。
さらに、許可を維持するためには更新だけでなく、毎年の決算変更届や、経管・専技・営業所・役員などに変更があった場合の各種変更届も必要です。「取って終わり」ではなく、「維持していく手続き」がある、という前提で考えておきましょう。
実務でも、更新時期をうっかり失念してしまい、失効してから慌てて相談に来られるケースがあります。許可取得後は、更新時期と毎年の届出をカレンダーやリマインドで管理する仕組みを最初に作っておくと安心です。
申請前に確認したいチェックリスト
ここまでの内容を、申請前のセルフチェックとしてまとめます。
- 請け負う工事は、軽微な工事(建築一式以外500万円未満など)の範囲を超えるか
- 分割契約・材料支給を含めた「実際の請負代金」で判断できているか
- 経管(建設業で5年以上の経営経験がある常勤者)を置けるか
- 専技(資格または実務経験を持つ専任者)を営業所ごとに置けるか
- 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力を証明できるか
- 営業所の実体(来客対応・契約スペース・使用権原など)があるか
- 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)に適切に加入しているか
- 欠格要件に該当しないか
- そもそも、どの業種の許可が必要かを整理できているか
実際にそろえる書類は、建設業許可の必要書類一覧【東京都版】にまとめています。一つでも「分からない」「確認が必要」がある場合は、その項目こそ早めに確認しておきたいポイントです。
まとめ
建設業許可申請でよくある5つの勘違いを整理しました。
- 小さな工事だけなら許可は不要 → 金額の数え方に注意
- 個人事業主は取れない → 取得できる
- 資格さえあれば取れる → 経営経験(経管)も必要
- 現金で500万円ないと取れない → 資金調達能力でも可
- 一度取れば一生有効 → 5年ごとの更新が必要
建設業許可は、要件を一つずつ確認していけば、決して取得できない手続きではありません。大切なのは、思い込みで進めず、自分のケースでは何が必要で、何を確認すべきかを早い段階で整理しておくことです。「何から確認すればいいか分からない」という方は、建設業許可は「申請」より「今の状況を整理」から始まるもあわせてご覧ください。
このテーマに関連して、「建設業許可が必要なケース・不要なケース」「更新手続きの流れ」など、個別のテーマも順次まとめていく予定です。あわせてご覧いただくと、建設業許可の全体像がより立体的に見えてくるはずです。
建設業許可の取得は、ゴールではありません。
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