東京で建設業許可を取得する!経営事項の管理責任者(常勤役員等)の要件攻略ガイド
高円寺の行政書士事務所アバンテ代表の永尾です!
東京で建設業での独立開業を検討されている皆様、建設業許可の取得は事業成功の重要な第一歩です。
しかし、許可申請の中でも特に複雑で重要なのが「経営事項の管理責任者(常勤役員等)」の要件証明です。
今回は、東京都の建設業許可における人的要件の核心部分について、最新の規定に基づき詳しく解説いたします。
経営事項の管理責任者とは
経営事項の管理責任者は、東京都の建設業許可において「人的要件」を構成する最も重要な要素の一つです。この責任者は、建設業法に基づき、建設業を営む営業所において経営業務の管理を適切に行う責任を負います。
単なる名義上の役職ではなく、実質的に建設業の経営に関与し、日々の業務執行において重要な決定権限を持つ者でなければなりません。
経営事項の管理責任者になれる者の範囲
法人の場合
経営事項の管理責任者となることができるのは、以下の者です。
基本的な対象者
- 法人の取締役
- 業務を執行する社員
- 執行役
- これらの者に準ずる者
権限委譲を受けた執行役員 取締役会の決議を経て具体的な権限委譲を受けた執行役員も対象となります。この場合、権限委譲の内容と範囲が明確に定められていることが重要です。
支配力を有する者 役職の有無にかかわらず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役と同等以上の支配力を有すると認められる者も対象です。具体的には
- 総株主の議決権の5%以上を有する株主
- 出資総額の5%以上に相当する出資をしている個人
- 顧問や相談役(その可能性があれば含まれる)
などの方が該当します。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、事業主自身が経営事項の管理責任者に該当しますよ!
「常勤性」の厳格な証明要件
東京都では、常勤性の証明は特に厳しく確認されるポイントです。
常勤の定義
「常勤」とは、原則として建設業の営業所において、休日を除く毎日、所定の時間、その職務に従事していることを指します。
常勤性を否定する要因
経済的な観点
- 被扶養者となっている者
- 申請事業者以外から報酬を得ている場合
これらの場合、原則として常勤とはみなされませんので注意してください(都道府県ごとに細かな部分が異なります)。
通勤に関する制約 営業所への通勤時間が片道およそ2時間以上である場合、以下の通勤確認資料の提出を求められることがあります。
- 通勤定期券
- ETC記録
- その他の通勤を証明する資料
繰り返しになりますが、都道府県ごとに証明書類が異なるため、取得したい都道府県の手引きを確認してください。
「営業所」の定義
営業所は、請負契約の締結に係る実体的な行為を行う場所である必要があります。具体的には、
- 見積もり作成
- 入札参加
- 契約締結
単なる登記上の本店や事務連絡所、工事現場事務所は営業所として認められません。
指導監督的な実務経験の詳細要件
東京都の建設業許可において最も重要な要件の一つが「指導監督的な実務経験」です。この経験は単なる技術的な実務ではなく、企業の経営業務全般にわたる指導監督の視点が求められます。
指導監督的な実務経験の定義
「指導監督的な実務経験」とは、許可を受けようとする建設業種の建設工事において、以下の条件を満たす経験を指します。
工事規模の要件
- 一般建設業許可:4,500万円以上
- 過去の工事に関する特例:
- 平成6年12月28日以前:3,000万円以上
- 昭和59年10月1日以前:1,500万円以上
契約形態の要件
- 発注者から直接請け負った工事であること
- 下請負人としての経験は対象外
経験期間
- 2年以上の継続した経験が必要
求められる3つの業務経験
指導監督的な実務経験には、以下の3つの業務経験が含まれる必要があります:
1. 財務管理 建設業の財務に関する業務経験で、具体的には:
- 資金調達業務
- 予算管理業務
- 決算業務
- 企業の財政状態を健全に保つための管理業務
2. 労務管理 建設業の労務に関する業務経験で、具体的には:
- 従業員の採用業務
- 人材配置・育成業務
- 労働条件の管理業務
- 人材を適正に配置・活用するための管理業務
3. 業務運営 建設業の業務運営に関する業務経験で、具体的には:
- 請負契約の締結業務
- 工事の計画・実行業務
- 品質管理業務
- 安全管理業務
- 事業活動全般を円滑に進めるための管理業務
重要な計算ルール
兼務の場合の計算 同一人が複数の業務(財務管理、労務管理、業務運営)を兼務している場合、それぞれの経験年数を重複して計算することが可能です。
職制上の地位の要件 この経験は原則として「常勤役員等」として、またはそれに準ずる職制上の地位で培われたものである必要があります。
指導監督的な実務経験の証明方法と必要書類
必須提出書類
基本書類
- 常勤役員等証明書
- 常勤役員等略歴書(様式第七号 別紙および様式第七号の二 別紙)
常勤役員等略歴書には、経験を得た当時の商号や個人名、雇用期間、役職、そして具体的な職務内容を詳細に記載する必要があります。
経験年数を証明する資料
建設業許可を有していた場合
- 証明期間分の建設業許可通知書
- 受付印が押印された建設業許可申請書・変更届出書・廃業届等の写し
東京都知事許可の特例 許可番号、許可業種、許可期間を様式第九号の備考欄に記入することで、上記資料の提出を省略できます。
建設業許可を有していなかった場合 業種が明確に分かる期間通年分の以下の書類:
- 工事請負契約書の写し
- 注文書の写し
- 請求書の写し
重要な注意事項
- 請求書や押印のない注文書の場合は、入金確認資料による補足が必要
- 複数の工事における工期の重複は認められず、工期は片落ち計算される
- 請求書等の間隔が3か月未満であれば経験期間として認められる
- 3か月以上の間隔や証明者が異なる場合は経験期間として認められないことがある
地位・権限を証明する資料
執行役員等の場合に必要な書類
組織図 業務を執行する社員、取締役、執行役に次ぐ職制上の地位にあることを確認するための資料です。
業務分掌規程 業務執行を行う特定の事業部門が建設業に関する事業部門であることを確認します。重要な点:
- 一部の営業部門や資金・資材調達のみを分掌する執行役員等は認められません
- 規定で確認できない場合は、決裁文書や稟議書などの追加資料が必要
取締役会の議事録・人事発令書 取締役会の決議を経て特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受けた者として選任され、具体的な業務執行に専念する者であることを確認する資料です。
常勤性を証明する資料
常勤役員等および専任技術者は、原則として本社や本店において休日を除く毎日、所定の時間、その職務に従事していることが求められます。
常勤性証明に使用される資料
- 健康保険(全国健康保険協会または組合管掌健康保険)の加入状況を示す資料
- 厚生年金保険の加入状況を示す資料
- 納入告知書
- 領収証書
- 納入確認(申請)書
審査の重点ポイント
厳重にチェックされる資料
- 健康保険証の写し
- 許可要件に関わる裏付け資料
- 地位・権限を証明する各種資料
比較的軽微なチェックとなる資料
- 建設業財務諸表(比較的さらっとしかチェックされない傾向)
ただし、財務諸表は建設業法で定められた様式で作成する必要があります。
指導監督的実務経験と専任技術者の関係
建設業許可において、「指導監督的な実務経験」と「専任技術者」は異なる観点から評価される重要な要件です。
それぞれの重視する側面
指導監督的な実務経験 経営的な側面を重視し、以下の能力が求められます:
- 企業の財務管理能力
- 労務管理能力
- 業務運営能力
- 建設業全般の経営判断能力
専任技術者の実務経験 技術的な側面を重視し、以下の能力が求められます:
- 特定の建設工事に関する技術的実務経験
- 工事の品質管理能力
- 技術的な指導・監督能力
兼務の可能性
一人の者が同一営業所内で両方の要件を満たし、兼務することは可能です。この場合、経営的能力と技術的能力の両方を証明する必要があります。
申請時の重要な注意点
欠格要件の確認
申請者やその役員等が以下の欠格要件に該当しないことが前提条件です:
- 虚偽記載を行った者
- 破産者で復権を得ていない者
- 過去5年以内に許可を取り消された者
- その他法律で定められた欠格事由に該当する者
書類の整合性
提出されるすべての書類間で矛盾がないことが厳しくチェックされます。特に以下の点に注意が必要です:
- 会社名・商号の統一
- 役職名の一貫性
- 期間の整合性
- 工事内容の具体性
財務諸表の取り扱い
建設業財務諸表については以下の点が重要です:
- 建設業法で定められた様式での作成が必須
- 比較的軽微なチェックとなる傾向がある
- 一方で、健康保険証等の許可要件関連資料は厳重にチェックされる
専門家サポートの重要性
事前相談の推奨
許可要件を確実に満たすためには、事前に以下への相談が推奨されます:
- 専門の行政書士事務所
- 東京都の行政機関
専門家によるサポート内容
経験豊富な行政書士事務所では、以下のような多岐にわたるサポートを提供しています:
書類作成・収集の代行
- 複雑な様式への適切な記入
- 必要書類の漏れのない収集
- 証明資料の適切な整理
行政とのやり取り
- 事前相談の同行
- 補正対応
- 審査状況の確認
初回相談での許可取得可能性の判断
- 要件充足の事前確認
- 不足要件の指摘と改善提案
- 申請戦略の策定
東京都特有の申請上の留意点
審査の厳格さ
東京都では建設業許可申請の件数が多く、審査も全国的に見て特に厳格です。書類の不備や要件の不足があった場合、補正や追加資料の提出を求められることが頻繁にあります。
事前準備の重要性
以下の点に特に注意して準備を進めましょう:
書類の整合性 すべての証明書類間で、会社名、所在地、役職名、期間などに齟齬がないよう細心の注意が必要です。
証明書類の完全性 必要な証明書類が一つでも不足していると、申請受理が遅れる可能性があります。
常勤性の具体的証明 抽象的な説明ではなく、具体的で客観的な証明資料を準備することが重要です。
申請成功のための実践的アドバイス
事前相談の積極的活用
東京都建設業課では事前相談を受け付けています。複雑なケースや証明書類に不安がある場合は、申請前に必ず相談することをお勧めします。
余裕を持ったスケジュール設定
東京都の建設業許可申請は審査に時間がかかる場合があります。事業開始予定日から逆算して、最低でも6ヶ月程度の余裕を持って準備を始めましょう。
専門家との連携
建設業許可の要件は複雑で、素人判断では見落としがちなポイントが多数存在します。行政書士などの専門家と連携することで、確実な許可取得を目指しましょう。
まとめ
東京都の建設業許可における経営事項の管理責任者の要件証明は、許可取得の成否を決める最重要ポイントです。常勤性の証明、経験要件の満足、適切な書類準備など、すべての要素を網羅的に満たす必要があります。
特に東京都では審査が厳格であるため、事前の十分な準備と正確な書類作成が不可欠です。不明な点は早期に専門家に相談し、確実な許可取得を実現しましょう。
建設業での独立開業という夢の実現に向けて、適切な準備を行い、着実に許可取得への道筋を歩んでいきましょう。
東京都の建設業許可申請でお困りの際は、ローカルルールを熟知している許可申請を専門とする行政書士にご相談ください。
書類作成から行政とのやり取りまで、許可取得に向けた包括的なサポートを提供し、皆様の事業成功を全力でサポートいたします。